外国人や初めての人にも理解し易い
ボードゲームとして「将棋」をデザインする試み
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一番最初に試作したデザイン将棋
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事の始まりは2009年のゲームマーケットでお会いした女流プロ棋士の「北尾まどか」さんから、お洒落で外国人にも理解しやすい将棋ボードをオリジナルで作るご相談を受けたことでした。彼女には既に自分の頭の中におおまかなデザインイメージがあるとのことでしたので、後日お話しましょうということになりました。
こういう命題が与えられると自分でも作りたくなってきたので、僕もボードゲーム作家として将棋をデザインしてみる事にしました。こういう衝動を押さえられないのが物作り人の性(サガ)ですね。
さて、自分なりに考えてみると、実は僕は将棋を今までに子供時代に2、3回しかしたことがありません。
将棋はかなり複雑なゲームです。お洒落でしかもユニバーサルデザインにするのは一筋縄では行かない作業です。まずは基本ルールの確認のために、Wikipediaで将棋を検索して、ルールを頭に入れることをしました。
はは〜、やっぱり結構複雑だですね。長い年月を経てルールのバグを改訂してきた結果の上に成り立っているゲームという印象をうけました。
ボードゲーム作家としては、こういう場合はルールを整理してよりシンプルに直してしまうのが一番の近道なんですけど、それでは「将棋」としてのボードゲームにならないので、デザインを将棋のルールに合わす努力をすることにしました。当然ですね。
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▼ボードデザイン▼
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将棋は9×9路盤です。誰でも頭に浮かぶチェスボードのようなチェックデザインでは単なる装飾のデザインにしかならず、ルール上の特性を反映させたデザインとは言えません。ボードゲームにおいてデザインは単なる飾りではなく、ルールや機能を効果的に反映しているものでなくては意味がありません。ルールを読んでいて自陣3列と敵陣3列には深い意味があることに気が付きました。そこでボードを自陣3列、敵陣3列、中立地域3列に3分割してデザインすることにしました。
これでボードのデザインがルールを反映させたものになり、しかもデザインとしてお洒落に美しく仕上げることができるようになりました。
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▼駒のデザイン▼
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将棋の駒には3つの特性が必要不可欠でることがわかりました。
1:王様以外の駒には敵味方の区別があってはならない。(取った敵の駒を自分の駒として使うため)
2:駒の裏面には成りの時に新しい動きの属性と表面の属性の2つが表現されていなくてはならない。(取った敵の駒を使うので、裏面を見ただけでも表面の属性が分からないといけない。使う時は表面なので。)
3:駒には方向性が示されていないといけない。(敵も味方も同じ駒なので、攻める方向性が無いと途中でどちらの駒か分からなくなってしまうから)
さて、これは厄介です。特に3が厄介です。将棋では駒の形を変形5角形にすることで方向性を表現しています。既存のタイルには形状で方向性が表現できるような形はありません。そこでタイルに半分色を付けることで方向性を表現することにしました。
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1と2の解決には将棋では文字を使うことで解決していますが、今回の命題である外国人にも分かりやすいという意味ではたとえアルファベットであったとしても得策とは言えません。またキャラクターやアイコンも特定地域文化の外国人を対象とするなら考えられますが、世界中の外国人と規定すると得策とは言い難いデザインとなります。それにキャラクターやアイコンでは複雑な駒の動かし方を覚えなくてはなりません。できれば駒のデザインを見ただけで、その駒の動かし方が誰にでも分かるのが最善です。
そこで矢印を使ってデザインしてみることにしました。単純な矢印では単なるベクトル将棋となってしまい、デザイン性やお洒落さに欠けてしまいます。
そこで以前に自作の「カチットナイト」で作った方向性をデザインした駒をリメイクしてデザインすることを試みてみました。
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実際にボードゲーム「SHOGI」(将棋)を作ってみました
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▼ボード▼
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基本デザインのボードデザインのみではとてもシンプルすぎて寂しい感じがしたので、縁に装飾を施しますた。ゲームルール的には直接関係ありませんが、対人のゲームでは見た目も大切です。
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▼駒▼
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駒を配置するとこんな感じです。駒の形状は丸ですが、半円の色付けを施して、駒に方向性を持たせています。駒の進める方向をデザインされたベクトル(矢印)で現しています。
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成った時の裏面デザインです。表面の動きと裏面の動きを両方を表現しています。
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製作の途中で読者の方から初期の銀将、桂馬、香車の成りデザインでは裏表両方の動きが可能なよに錯覚してしまうのではとご指摘をいただきました。たしかにその通りなので表面の動きを薄く透かし的に表現する事でより分かり易く修正しました。
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王将のデザインも初期デザインから修正しました。将棋駒では駒の大きさで違いを際立たせていますが、今回のタイル駒は全て同じ大きさなので、べクトルのデザインの大きさで違いを出す事にしました。
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やっと最初の試作プロトタイプが完成です。
余談ですが、この最初の試作品は現在女流プロ棋士の「北尾まどか」さんが所有されています。
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